減災コミュニケーション・バンダナデザイン・コンテスト2016 | 展示・結果 - 表彰と結果 - 入賞作品詳細

header design

入賞作品の紹介

この度のコンテストで入賞となりました8作品について、紹介します。

  • 「提案意図」はエントリー時の作者による解説テキストを配しています。(一部、意図を曲げぬ範囲で事務局にて補整しています。)
  • 「評価コメント」は、今回の審査委員兼コンテスト事務局の平林英二によるものです。

入賞作品

最優秀グランプリ

作品タイトル:ピクトグラフバンダナ

作者:吉田 正己

提案意図

災害時には情報の共有や意思の疎通が不可欠。近年外国人旅行者が増え、英語圏以外からの旅行者も多くなり、言葉が通じないことを補うために、バンダナのピクトグラムを使うコミニュケーション方法を提案する。騒音や口の利けない状況など、バンダナ折り畳んでのピクトグラムコミニュケーションも意思疎通ツールとなる。さらにデザインの白部分を反射印刷にすることで夜間の注意喚起やメッセージを送ることができる。

評価コメント

布面を9分割し、それぞれに配置したアイコン、または横並び3コマで記した「SOS」で、日常から非日常への境目において多面的な活用可能性を予感させる。洗練されたグラフィックの完成度も高い。5つの評価軸の全てで高い得点を得て、最優秀作品に選定された。また審査員評価とは別途、DMfGのワークショップで参加者の議論によって選定された案の中でも最高得点を得たことも添えておく。さてこのバンダナが世の中に現物として現れたとき、まずは日常においてこのコミュニケションがどれほど活かせるかをぜひ実際に試してみたい。しかし日常的に持ち歩く際、まずはこのデザインに則り縦横3つに折り畳むことになるだろう。そのサイズはちょっと大きめでポケットに入らないかもしれない。その先でどうたたむべきかに少し悩むかもしれない。

  • ピクトグラフバンダナ

準グランプリ

作品タイトル:マタニティマーク案

作者:岸浪 典子

提案意図

日常生活においても周知されているマタニティマークをバンダナで大きく見せることで、支援者に赤ちゃんの存在を早く見つけてもらう。授乳ケープやおくるみ、日除けなど赤ちゃんの姿が見えない動作の際も存在を知ってもらえる。ピンクは副交感神経を働かせてリラックスする作用があり、災害時の緊張感を和らげる効果にも期待する。

評価コメント

外出の際、自分が妊婦であることを社会に対しさりげなく示すために、マタニティマークのバッジ、タグをバッグや身につけることが普及してきている。ここにバンダナを活用しようというアイディア。一般認知の普及度が高いシンボルを応用することによるわかりやすさは他案にはない説得力を持った。またバンダナの大きさや利便性は、従来からあるバッジやタグを超えた利点を生み出す可能性も感じさせられる。5つの評価軸全てにおいて高い得点を得たことも付記する。ちなみに参考までだが、ここで使われたマタニティマークは厚生労働省により公開されており自由に使うことができる。

  • マタニティマーク案 表
  • マタニティマーク案 裏

準グランプリ

作品タイトル:学ぶバンダナ

作者:湯井 恵美子

提案意図

減災デザインバンダナを作ることを小学校での防災授業のテーマにする。バンダナは4つのパーツに分かれる。1つは学校名と氏名などを書くが、学年で色を分ける。171のダイヤルは実際に電話をかけ伝言を残したり確認する訓練をする。集合場所は学校での防災授業の場合は教室等、地域自治会などで行う場合は建物の名称を記入する。非常持ち出し袋は各自が学校や家庭で準備したいものを書き込む。出来上がったバンダナを使い、実際の避難訓練や避難所訓練を行う。

評価コメント

対角線で分割した4つの画面それぞれにシンプルなテーマで情報を込めた。子ども達が日常的に使いはじめる前段で、まずはこの機能について学習をしてから身につけるというプロセスを含めて発案。いざ非常時を迎えたその時に、バンダナを保持する本人の速やかな行動を達成することと合わせ、他者によって救出される場合にも役立つものとなるだろう。このコンセプトが機能するならば、このバンダナは一般人にとっても使えるものになると感じさせられる。評価軸⑤(各審査委員による個別の評価・見解)の集計において最高得点を得たことも付記しておく。

  • 学ぶバンダナ

優秀賞

作品タイトル:あおいとり・安心シロクマ

作者:三尋木 正夫

(※同作者の連作とし、シリーズ1点として選定)

提案意図

避難や緊急時の救援作業においては分かりやすいことが第一。頭に冠った三角巾のバンダナは、救援者の証しとして目印になる。図柄中の白い部分は、どのような救援を求める者であるのか文字を書き入れるようにして使用する。同時に普段にも使用してみたいおしゃれでかわいいデザインを目指した。

評価コメント

2種の作品の提案であるが、デザイン的には甲乙をつけがたい双方をコンセプトが共通する1つの提案におけるバリエーションと解釈させていただき、シリーズ1点としての入選に選定した。どちらの図案も評価軸①「日常的に使いたい度合い」において最高位の評価を得た。いますでに一般のスカーフやバンダナの製品として世に出ていておかしくない洗練されたヴィジュアルであるが、中央の大きめの白抜きの箇所に自由なサイン掲示の欄を設け、コミュニケーション機能を込めることを込めた。さて日常の装備品として好んでこれを使ったとして、その日常が一転し、非常時を迎えたとき、本当にこのサイン掲示機能を用い、機能するのか。この点については疑問も残るところかもしれない。

  • あおいとり
  • 安心シロクマ

優秀賞

作品タイトル:乗せますバンダナ

作者:吉川 萌

提案意図

3.11の際の東京。この日は電車がストップし、歩く人や車で街中があふれかえった。大災害でなくても大雨や何かしらの事故の際に、都市の公共交通機関が麻痺することは多々あります。そんなとき、少しでも効率よく人の流れを作れたらと思い提案する。「乗せますよ」の面には、車を運転する人が、座席に余裕のある場合に同じ方面の人を乗せられるという意思を表明するサインで、白帯部分に行き先や方面を記入する。「相乗り歓迎」の面は、タクシー待ちで大行列ができた際などに活用できるのではないかと考えた。防犯上の観点から使いにくい面も考えられるが、使える人から使ってもらうことで、特に子どものいる親などは家族の元に早く帰ることができるようになるといいなと思う。

評価コメント

提案作品の中にはバンダナの「フラッグ機能」に着目するパターンがあり、この作品はその1点であった。また評価軸②「日常および非日常におけるコミュニケーションのサポート力の度合い」において最高得点を得た。実際の日常の中で見ず知らずの者同士がもしも「相乗り」をできたなら、さぞ効率が良いと感じる時はあるだろう。その際、他人どうしの円滑なコミュニケーションを生み補助する装置としての発案は、ユーモアのセンスを含むアイディアとして秀逸だった。が、さて自分ならこのバンダナを持って本当に人に相乗りを仕掛けるだろうか?そう考えると他人どうしのコミュニケーションとはなかなかハードルが高いものだと改めて考えさせられる。日常よりも、むしろ非常時の助け合いにおいて機能を発揮する可能性が高いアイディアかもしれない。

  • 乗せますバンダナ

優秀賞

作品タイトル:地震がおきたら何するの?

作者:福岡 照美

提案意図

地震が起きたとき突然の事なのでパニックになると思う。その時、自分がいる場所別ごとに、どのように行動したらよいのかについてまとめ、載せた。携帯も充電がなくなれば調べることができない。意外にも災害用ダイヤルなどもすぐには思い出せないのではないか。こうした情報をバンダナに書いておけばすぐに役立てられると考えた。

評価コメント

評価軸③「製品化による普及・浸透の可能性」において高い評価得た。バンダナにグラフィックとしての防災・減災情報を掲載するタイプに属す案。実は既存の防災・減災バンダナ類の製品にもこうしたコンセプトの物は少なからずある。が、この案は対角線において4分割した面それぞれにあてるテーマを「いざその時を迎えたらどう行動するのか」という1点に絞り込んだ点など、洗練さが光る。また対人コミュニケーションを促す吹き出しも付加し今回のテーマに沿っていただく面もあったが、むしろ日常においてこのバンダナを広げたときに「こんなときどう行動するべき?」といった会話がその場にいる者どうしではじまるような、そうしたコミュニケーションを育む度合いに可能性があると感じさせられた。

  • 地震がおきたら何するの?

優秀賞

作品タイトル:避難所お手伝いニーズ別バンダナ(聴覚・視覚・内部障がい用)

作者:チームEmiMami

提案意図

被災して避難した避難所において、障がい種別や病気、状態の別によって全く違うニーズを支援者と受援者がデザインを通じて速やかに理解し合うためのバンダナ。障がいの色分けが全国で共通して認知されると非常に便利。両端の白地部分には名前や受付番号などを記載し、受付のトリアージで本バンダナを配る。その時、避難所の受付カードとペアにすると情報の管理がしやすい。

評価コメント

評価軸④「テーマ・コンセプトの重要性」において最高得点を得た。この案では固有の障がいを持つものがそれを表明することで、混沌とする避難所においての円滑なコミュニケーションにつなげるというアイディアが込められている。各種の障がいを示すアイコングラフィックスのみによるシンプルなデザインとしての洗練さもあり、実際の現場で本当に機能するのかどうかを試してみたいと思わされる。しかしこのプランを実行させるためには、これらのアイコンが何を示すものであるかの認知が一般普及している必要性、また、各種の障がいを色で識別する際の妥当性等々、デザインの社会への浸透を抜きにしては高い効果を望みにくいだろう。こうした観点での課題にも合わせて気付かされる。

  • 避難所お手伝いニーズ別バンダナ(聴覚・視覚・内部障がい用)
  • 避難所お手伝いニーズ別バンダナ(聴覚・視覚・内部障がい用)
  • 避難所お手伝いニーズ別バンダナ(聴覚・視覚・内部障がい用)

特別賞 DMfG賞

作品タイトル:Help Clover

作者:大友 佑理

提案意図

このバンダナデザインは、「クローバー」と「助け合い」をコンセプトに制作した。地色は、災害が起きたときに目につきやすく、安心感ある明るめのグリーンとした。クローバーの葉の形をハート形にし、それをつなげる事で、人と人とのコミュニケーションをより深めるという意味をこめた。中心に大きなクローバーを白抜きで配置し、非常時には自身の詳細等をマーカーで書き込めるようにした。また、災害が起きてしまった時に少しでも人の励みになり、人と人とのつながりを大切にしてもらえるよう、「HELP」という文字や、クローバーの下には手書き風の書体で「助け合おう、繋がろう」の文字を配置し、全体的に安心感あるデザインに仕上げた。

評価コメント

今回寄せられた全提案を一堂に並べ、これを見ながら、本当に世に生み出すべきバンダナはどれであるかを、参加者の議論によって選定してみようというワークショップによって、第2位の得点を得た。(1位はグランプリ作品として選定された「ピクトグラフバンダナ」であった。)優しさにあふれる色彩と込められたメッセージは、自分自身がいつも持って使いたいバンダナ、その時の安心感や安らぎといった方向の魅力に満ちている。命の危機を感じる緊迫性のある状況を過ぎ、これから長い道程を互いに助け合って乗り越えて行かなければという際に、みんなの心の拠り所としてのシンボルになれそうな予感がある。

DMfG参加者から挙げられたコメントより

  • ファミリー層をはじめとした色々な人に好まれる癒し系の色使いがよい。
  • デザインは活かしつつ、文字を変えて違うメッセージを発信するなどの、可能性が感じられる。
  • 同じデザインでの色違いなど、バリエーションが想像しやすく、普及に向いている。
  • Help Clover

一般投票賞

作品タイトル:マタニティマーク案

作者:岸浪 典子

(※準グランプリ入賞作と同様。概要はそちらでご確認ください。)

本案に投票した方のコメントより

  • 赤ちゃんを大事にしている感じがいい。
  • マタニティマークが一般人に対して周知されてよい。
  • ゼロ時(事務局注:いつも身につけたり、普段の暮らしの中に取り込む備え)でも使いやすい。ママになると親しみのあるこのデザインが、災害のときにも心を落ち着かせてくれると思う。
  • 優しい色と絵柄で、妊婦さん、赤ちゃん連れという事もわかりやすい。